連載コラム14 – オススメの顧客管理ツール « ミッドランド税理士法人(豊田)

連載コラム14 – オススメの顧客管理ツール

 

 

前回は事業活動の基盤としての顧客管理について、その効率・品質・価値 という側面から見ていきました。顧客管理は非常に重要な事業経営の領域であり、企業や組織に欠かせない機能です。今回は、そのように重要な顧客管理に取り組むに当たり、より効率よく実践するためのツールについて触れていきたいと思います。

第14回:オススメの顧客管理ツール

顧客管理ツールの整理の仕方は様々だと思いますが、ここでは以下の要素で整理してみたいと思います。

  1. 顧客の生涯価値は高いか?
  2. 顧客の購買頻度は高いか?

 

1. 顧客の生涯価値は高いか?

生涯価値とは、ある顧客がその生涯において消費する価値の総量を指します。生涯価値の高い商品やサービスには、住宅・自動車など1つの取引の単価が高額なものや、クラウドサービスや車検など継続して提供することで総量として高くなるようなサービスが含まれます。その他の具体例としては、学習塾・トレーニングジム・会計事務所などの会員向けサービスや、製造業等の継続取引なども該当します。

 

当然ながら、生涯価値が高い商品やサービスは獲得したいち顧客あたりの収益が大きいため、その顧客を獲得するためには、競合企業との熾烈な競争に勝たなければなりませんので、これらのビジネスにおいては、「営業」という活動を伴うことが多いと思います。事業経営的に営業を考えた場合には、営業とは、『顧客』と『商品やサービス』を『営業担当者』が紐付けていく活動であると考えられます。そのため、営業をしている組織では、営業がスムーズになるように、個人または企業や組織という単位で顧客を管理することが多くなります。顧客管理は、営業管理や販売管理という後工程のための機能としての位置づけです。

 

これらの営業のための顧客管理をするためのツールの代表格がCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)と言われるソフトです。CRMの中には、汎用的に利用可能な Kintone(キントーン)やSalesforce(セールスフォース)など、業務に特化した奉行Vや弥生販売、業種に特化した Jorker <自動車販売>やサロンボード <サロン・エステ等> などがあります。従前は、1つのツールの中にマーケティング、セールス、商品やサービスの提供または開発、それらの提供に必要な資源(いわゆる固定費)の管理を全て詰め込んだ統合的なツールが主流でしたが、時代の変遷により、現在では個々の機能に特化したツールを連携させて利用する手法が主流になっています。特に、経営資源の乏しい小規模企業では顕著です。ここに記載した各種サービスの多くは、CRMだけでなく、後工程のSFA(営業管理・販売管理)やSCM(工程管理)などの機能も包摂しています。なお、CRMとSFAを厳密に区別することはできませんが、主に顧客の家族構成や住所等を管理するのがCRMであり、その顧客との間の営業プロセスを管理するのがSFAくらいに考えて頂けば良いと思います。

 

例えば、ある『商品』の購買可能性が高いセグメントをCRMから抽出してメールマガジンを配信したとします。その『顧客』が『商品』検討を始めて案件として認知されると、SFAの上で「営業」がスタートします。そして、「受注(または納品や完工)」になると、会計ソフト上では「売上」と「売掛」が計上され、債権管理ソフト上で「請求書」が発行されます。その後、『顧客』が「請求書」に従って支払いを実施すると、預金口座に「入金」の記録が発生します。その「入金」によって、会計ソフト上では「売掛」の減少と預金残高の増加が発生し、SFAでは「受注」ステータスが「入金済み」ステータスに変更になります。そして、CRM上にこの取引の明細が、顧客を主軸として紐付けられていきます。今後、もし保守メンテナンスの問い合わせなどがあった場合は、CRMから顧客データを引き出して利用することになります。CRM/SFA、会計ソフト、インターネットバンキング、債権管理ソフト、いずれも全て別の会社が提供しているものですが、連携可能です。

 

これらのサービスは、月額で課金するものが多く、安価なものであれば1ユーザーあたり千円前後から、高価なものでも一万円前後です。初期の導入コストは数十万円から数百万円まで幅があります。業務の変化に対応できる柔軟性の高さがありますので、複雑な業務プロセスでもなければ、まずは安価なkintone 等を利用して始めてみると良いと思います。100万円に満たない投資で始めることができ、何らかの助成金が利用できることも多いです(働き方改革推進助成金 R2 12.31まで など)。

 

なお、これらのサービスを導入するに当たり、重要な着眼点があります。それは、すでに業務プロセスがある程度整理できているかどうかです。例えば創業直後の会社や、新しい商品の場合、業務プロセスが確定していないケースがあります。ある程度の社歴がある会社でも、業務プロセスが標準化できず属人化していたり、形骸化されたムダなプロセスが数多くあるケースもあります。そのような場合には、いきなり管理ツールの導入をするのではなく、まずはエクセル等を使って簡便的に管理を始め、業務プロセス自体の検討をすることもできます。その検討においては、経営者、現場、IT部門が三位一体で参画すると良いと思います。「現場に任せる」「IT部門や外注に下請けさせる」は失敗事例の典型ですのでご注意ください。

※ 実際の導入や活用にあたっての検討や活動については、次回で詳細に触れていこうと思います。

 

2. 顧客の購買頻度は高いか?

購買頻度の高い商品やサービスには、食品・消費財、クリーニングや飲食などが含まれます。製造業で特定の部品を継続的に販売している場合などは、年間の生産計画等に基づいて継続的に『納品』を行っていますが、その生産計画において価格や数量を決める元となる『購買』自体は年に1回程度しか実施されていないため、この対象からは外れます。主には消費者向けのビジネスがこの購買頻度の高い商品やサービスに該当しますが、アスクルやアマゾンなどは法人向けであっても月に数回の利用があり、利用頻度の高いサービスに該当すると思います。(アスクルやアマゾンは、前項の生涯価値も高く、購買頻度も高いビジネスです。)

 

これらのビジネスでは、取引の発生から経理(金銭の出納とその記録)までを一元的に同時に実施する必要がありますので、スマレジ、エアレジなどのクラウドPOSレジや、通販サイト等のような決済システムが必要です。これらのビジネスモデルでは、『顧客』が『商品』を購買するために、『営業担当者』による「営業」が必要ではないケースが多いと思いますが、一方で、『顧客』や『商品』の数が膨大になることが多くなります。before コロナの都心のファストフード店では、1台のレジが1時間に60回以上の取引を記録するようなこともありました。そのため、顧客の情報は『個人』単位で管理するよりも、『属性』で管理する方が合理的な場面も多いようです(アマゾンやアスクルは、顧客を『個人』としても『属性』としても管理しています)。

 

POSレジには、東芝TECやNECなどの大手製造メーカーが提供しているものと、スマレジやエアレジのようにiPadなどを利用してそのサービスがクラウドで提供されるものとがあります。チェッカーとサッカーの分業や応援が必要なスーパーマーケットや、レジの開閉回数が膨大になるコンビニエンスストアなどにとってのレジは、ソフトウェアとしてだけでなく、ハードウェアとしての機能も相当に求められますので、大手製造業企業が提供しているものが圧倒的に優位です。一方で、多くの小規模企業では、1時間のレジの開閉回数は多くても10-20回程度ですから、ハードウェアとしては”それなり”でこと足りることが多いようです。

 

スマレジ、エアレジなどは1店舗ごとに月額で課金するものが多く、安価なプランは0円からあり、高価なプランでも月に1万円前後です。初期の導入コスト(iPad等の購入コスト)は20万円程度です。経理や経営管理を効率化するためには勤怠管理サービスや会計ソフトなどとの連携が必須ですので、ご利用の会計ソフトとの相性を前提に選ぶことをおすすめします(TKCやfreeeをご利用の場合は、大手のクラウドPOSレジサービスはほぼ全て連携しています)。なお、飲食店の場合には、ハンディ(いわゆるOES)を利用するかどうか、小売店の場合には高度な在庫管理(消費期限管理など)や会員管理をするかどうか、というプラン選択の分岐がありますので、業種業態にあったものを選ぶと良いと思います。

 

なお、これらのビジネスモデルの多くは、企業や組織毎の業務プロセスのばらつきが少ない特徴があります。業務プロセスの設計を詳細に行わなくとも、ツールを導入し、ツールに合わせて働くことで定着化ができるるケースが多分にあります。一方で、徐々に顧客情報や商品情報の登録内容や登録方法にばらつきが出始め、当初明瞭に見えていた販売傾向や顧客属性が、少しずつ不明瞭になり始める、という傾向があります。こちらのパターンにおいても、経営者、現場、IT部門が三位一体で参画するという点にご留意ください。1.でも申し上げましたが、「現場に任せる」「IT部門や外注に下請けさせる」は失敗事例の典型です。

 

今回は、顧客の生涯価値と購買頻度の要素から、おすすめするツールについて触れ、典型的な失敗例についても記載しました。次回は、主にCRMツールの導入から定着までの流れをメインに、そのような失敗を回避する方法についても掘り下げていきたいと思います。

 

どのような業態であっても顧客管理は事業経営の必須となる機能です。これを機にご検討されてみてはいかがでしょうか。

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