連載コラム13 – 顧客管理の効果効能 « ミッドランド税理士法人(豊田)
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連載コラム13 – 顧客管理の効果効能

 

 

前回は、顧客管理の基本的なところを整理してみました。今回は、顧客管理の効果効能について、事業活動の効率・品質・価値にどの様に貢献するのか、顧客管理と、その後工程にある販売管理や生産管理との関係性や、経営との連携について考えたいと思います。

第13回:顧客管理の効果効能

効率

まずは効率です。事業活動における効率とは、基本的に『生産 ÷ 投入 = 効率』として算出できます。生産とは、売上高や出荷数、受注数などを指します。投入とは、仕入高や入荷数、発注数などを指します。つまり、効率を上げるためには、より多くの生産をより少ない投入で達成することが要求されます。

 

ここでは 生産 の側面から見てみましょう。例えば、生産を増加させるために、その構成要素のひとつである 客数を増加させるという目標を立て、広告や営業を行うとします。広告や営業は基本的に広告宣伝費や営業人件費という費用科目(投入)に紐付いています。この場合の効率の向上とは、より多くの客数(生産)を、より少ない広告宣伝費や営業人件費(」投入)で達成することだと思います。

 

客数を “ y ” 、広告宣伝費を “ x ” と仮定し、広告の集客効率を “ a ” と仮定すると、 y = a × x という計算式ができます。例えば、“ y ”を2倍に増加させるという目標を立てた場合、それを達成する方法は、効率 “ a ” を2倍にする 2y = 2a × x という方法と、 広告宣伝費 “ x ” を2倍にする方法 2y = a × 2x、さらにそれらの折衷案(ex:  2y = 1.25a × 1.6x )があります。

 

当然事業経営者であれば、できるだけ費用をかけず、効率の向上で客数を増やしたいと思います。そうすると、同じ広告費でも、できるだけ客数増加に繋がりやすい顧客属性を狙うことになります。女性客中心の美容院であれば、男性客に広告費を使うことは効率の低下要因になり、当然に商圏外の市場に対して広告費を使うことも、効率を低下させます。自社の集客に必要な顧客情報をどれほど活用できるか、で効率が変わることはイメージできるかと思います。

 

品質

次に品質です。事業活動において品質という言葉は、『サービス品質』、『商品品質』、『業務品質』など多様に使われますが、たとえばISO9000では「品質」を、「本来備わっている特性の集まりが要求事項を満たす程度」と定義しています。構成要素に分解すれば、『要求事項』と『満たす程度』です。ここに顧客管理がどう影響してくるのでしょうか?

 

前回のチャプターでは洗濯機の不具合の事例を取り上げましたが、顧客管理を行い、人間志向で情報を蓄積していくということは、本来明確に定義することが難しいこの『要求事項』を、できるだけ具体化していく役割を担います。洗濯機の駆動音はどの程度が望ましく(完全な静音が望ましいわけではない)、「洗い」「すすぎ」「脱水」はそれぞれどの程度の長さで、それらの機能を表現するのに、どのような言い回しが望ましいのか、このような要求事項を検討していくには、『お客様の声』が重要です。時に声にならない要求もあると思いますが、それらの顧客の情報を収集し、加工し、活用し、今後の商品開発の源泉となる未充足ニーズ(開発課題)として活かしていきます。

 

価値

最後に価値です。前回のチャプターの冒頭で、 「オレにこのペンを売ってみろ」という事例を取り上げましたが、その中で説明したとおり、価値は需要と供給で決まります。企業が自社の商品を販売しようとする市場において、当然ながら需要は各個人にあります。仮に、まったく同じ1本のペンであっても、その需要によって価値は変わります。

 

マーケティングの有名な書籍で「100円のコーラを1000円で売る方法(永井 孝尚 著|中経出版  2011/11/29)」というものがあります。この書籍の中のストーリーでは、リッツカールトンのルームサービスで1000円で販売されているコーラに触れています。顧客の需要を『飲料としてのコーラ』ではなく、『清涼感や佇まいなどの体験としてのコーラ』に切り替えています。前提にあるのは、リッツカールトンというホテルが、その顧客が何を望んでいるか(需要|品質的な意味で言えば『要求事項』)を把握しており、それを商品・サービスに反映できているということです。顧客管理から生産管理や商品管理までのコラボレーションとも言えると思います。当然ながら、リッツカールトンクラスのホテルになれば、顧客の『要求事項』を満たすだけでなく、それを超えた価値まで提供する訳ですが、これらの土台にあるのが顧客管理であることは言うまでもないでしょう。リッツカールトンは、自社の顧客がどういう属性であり、自社のホテルにどういう要求事項があり、どういう方法でそれを満たし、さらに、感動させるのか、を知っているのです。

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今回は事業活動の基盤としての顧客管理について、その効率・品質・価値 という側面から見てきました。昔から『お客様は神様』と言いますが、顧客情報が商品や販売にも影響し、事業の収益性にも影響するのですから、たしかに『神様』かもしれません。当社は、会計事務所としてお客様の経営の様々な面に触れさせていただくことが多い訳ですが、顧客情報が適切に管理できている企業や組織は様々な面で、そうでない企業や組織よりも優れているように感じます。しかし、顧客情報が管理できていない企業や組織は少数派ではないのも事実です。そういう意味では、今般のコロナ禍の経営環境において、まず顧客情報の管理からしっかりとやり直してみる、という取り組みは十分に価値があるのではないかと思います。

次回は、具体的にそんな顧客管理を始めるにあたって、より効率よく実践するためのツールについて触れていきたいと思います。

 

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