連載コラム16 – なぜ今リモートワークが必要なのか? « ミッドランド税理士法人(豊田)

連載コラム16 – なぜ今リモートワークが必要なのか?

 

 

新型コロナウイルスの感染は、6月に入り落ち着き始めたかのように見えましたが、現時点では再度拡大していると言えると思います。そんな中で、4月の緊急事態宣言下で突貫でリモートワークの仕組みを構築し、再びそのときの体制に移行し始めている企業や組織もあるでしょうし、4月時点では実装までは至らなかったが、そろそろ何とかしなければいけないと思っている企業や組織もあるでしょう。いずれにしても、現在の事情を見る限りでは、どのような企業や組織も、可能な限りリモートワーク可能な状況を構築しておくことが重要ではないでしょうか。今回のシリーズでは、リモートワークをどうやって始めるのか、そのための方法を改めて考え直してみたいと思います。

第16回:なぜ今リモートワークが必要なのか?

そもそも『リモートワーク』という言葉ですが、似たようなものに『テレワーク』や『在宅勤務』があります。広義では同じ意味として考えて良いと思います。狭義では、リモートワークのためにインターネットなどの情報技術を活用すると『テレワーク』、リモートワークにおける勤務地が自宅の場合に『在宅勤務』と言うようですが、ここでは包摂してリモートワークと呼ぶことにします。

 

 

さて、リモートワークの議論になるとよく出る意見に「私の会社ではリモートワークは不可能だ」というものがあります。実際に、製造業や小売業のように、いわゆる『現場』があり、事業所での勤務が避けられない業種というのは存在すると思います。しかし、それらの業種においても、経理や総務、営業、調達などの部門ではリモートワークが可能な場合がありますし、それらの部門がリモートワークをすることで、『現場』のスタッフへの感染リスクが低減できることも事実だと思います。リモートワークは働き方に関する戦略ですから、労働環境の異なる社員をひと束にして考えるのではなく、職務や所属部門に細分化して考えていくことが望ましいと思います。

 

また、リモートワークという考え方は、コロナ禍における感染防止のために考案されたものではなく、そもそも現代の働き方や暮らし方の多様性に適合するために登場したものです。『新しい生活様式』として改めて注目されることにはなりましたが、基本的にはコロナ禍に関係なく現代に求められている働き方であると言えると思います。

 

この根本に流れる働き方自体の潮流について、少し具体的な例を取り上げてみましょう。日経HR社による第26回「働き方改革に関する意識調査(2018年7月26日~8月8日)」(21~59歳の「日経キャリアNET」登録会員が対象、複数回答可)によると、「転職活動で応募する企業を選ぶとき、転職志望度が上がる制度は?」との問いに対する回答は、以下のとおりでした。

 

1位:副業・兼業の解禁(50.3%)
2位:テレワーク(在宅勤務含む)(49.5%)

 

調査結果からは、多様な働き方や暮らし方に対する希望が見て取れます。そもそも人は多様なものですが、日本では高度経済成長期を中心に、均質な商品を作るために、均質な人材が求められ、均質な教育によりそれを支援してきた背景があります。一時期の成功はあったものの、その後の環境変化に合わせた構造改革がうまく行かなかった結果、労働時間は長く、時間あたり付加価値額の低い産業構造になり、自殺率は高く、幸福度は悪化しています。直接的な因果関係は明らかではありませんが、多くの見識者にとっても無視できぬ相関関係があるようです。企業や組織においては、リモートワークの導入自体がそれらの直接的な解決策になるわけではなく、目的化される訳でもありませんが、リモートワークが導入可能な状態の企業や組織になること、つまり次の2つの要件を満たす企業や組織になることが、現代において求められていると言えます。

 

1. 事業活動のデジタル化(デジタル・トランスフォーメーション)

テレワーク(リモートワークにおいてICT技術を利用すること)の語源通り、リモートワークの実装には情報技術の活用が重要になってきます。経済活動上のライバルに競り勝ち、効率よく、高い価値を提供するためにはデータとデジタル技術の活用が不可欠です。

 

2. 制度や文化

さらに、その情報技術を活用するためには、仕事を一元化し、属人的な仕事を標準的なものへと変化させるような業務設計力が肝になります。つまり、労働環境や業務品質などの向上の障壁となる要因を突き止め、制度や文化という解決策に落とし込む力が、企業や組織には必要になります。

 

 

働き方自体の変化の潮流に関し、働き方や暮らし方が多様になってきているという調査について触れましたが、当然上記のリモートワークに必要な要件が満たせている企業や組織というのは、採用市場において優位性がありますから、優秀な人材を比較的安く得ることができます。また、多くの企業や組織の商品・サービスは、その開発、提供、販売を人間を介して行っており、活発な職場においては、同じ人件費の投下に対して享受できる収益が大きくなることも明らかです。

これらのことから、リモートワークの実装は、感染症予防の側面だけでなく、人材戦略の側面からも、企業のIT化戦略の側面からも、制度や文化の側面からも重要なアクションであり、まさに今考えるべき経営課題の肝であると言えると思います。今般の事情による経済への影響は計り知れないところがありますが、できることから、優先的に取り組んでいくしか無いのではないでしょうか。そういう意味でも、ぜひリモートワークについて考えてみて下さい。

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